薬剤師のこたろーです。私は総合病院の薬剤部から、在宅特化型の薬局に転職しました。
この記事では、そのときの転職活動の中身と、実際に在宅で働いてみて感じたリアルを書きます。病院で学んだことが活きた場面も、大変だったことも、正直にまとめました。
病院から在宅や薬局への転職を考えている薬剤師の方の参考になればうれしいです。
この記事のまとめ
・転職先は、友人に相談して紹介してもらった。相談してから内定まで約2か月半
・不安だったのは「自分の知識が他社で通用するか」「保険薬剤師として未経験でやっていけるか」。家族は反対しなかった
・いちばん大変だったのは、人手不足の病院で上司に退職を伝えること
・在宅は、患者さんに深く、長く関われる。病院で身につけた無菌調製や点滴の知識が活きた
・「病気を治す」医療の視点に加えて、「生活を支える」介護の視点を持つようになった。転職してから得た一番大きな学び
・立ち上げ間もない店舗で営業もした。MR時代の飛び込み営業の経験が役立った
・突発的な残業が多く、勤務時間は病院より長くなった。一方で、病院では意識していなかったコストや利益を考えるようになり、管理職の経験も積めた
・在宅はやりがいがある一方、熱意がないと続けにくく、休みをしっかり取りたい人には向かないかも。それでも、薬剤師として一度は経験した方がいいと考えている
・やっておけばよかったのは、緩和ケアの勉強と心不全療養指導士の認定。在宅で営業するうちに強みの大切さを感じ、今年度の心不全療養指導士の認定試験を受ける予定
病院から在宅へ転職しようと思った理由
転職を考えた理由は、主に3つです。
- 給料が安かった
- 月2〜3回の夜勤があり、体力的に厳しくなってきた
- 年功序列が強く、管理職を経験できるまで時間がかかりそうだった
「40歳を過ぎて夜勤ができなくなったら」「管理職の経験がないと転職先に困るかも」と先のことを考えて、まだ動けるうちに転職活動を始めました。在宅を選んだのは、国が在宅医療を進めている中で、在宅のノウハウはこれからの大きな武器になると考えたからです。
MRから病院、病院から在宅、そしてその後の転職まで、3回の転職の全体はこちらにまとめています。
転職先の探し方と、内定までの流れ
友人に相談して、紹介してもらった
転職先は、友人に相談して、紹介してもらいました。
転職サイトのマイナビ薬剤師にも登録して、調剤薬局を3社ほど提案してもらいましたが、いまひとつピンとこず、そのまま使わなくなりました。結局、友人からの紹介で転職先が決まりました。
相談してから内定まで約2か月半
流れは、次のとおりです。
| やったこと | |
|---|---|
| 1 | 友人に転職の相談をする |
| 2 | 在宅特化型の薬局を紹介してもらう |
| 3 | 面談 |
| 4 | 見学 |
| 5 | 見学の翌々日に内定 |
友人に相談してから内定までは、約2か月半でした。年収は、病院のころと比べて約100万円アップしています。
転職前に不安だったこと
転職を決めるまでに、不安だったことは2つあります。
- 自分の知識が、ほかの職場で通用するのか。薬剤師として働いたのは、その病院だけだったから
- 保険薬剤師としてやっていけるのか。調剤薬局で働いた経験がなかったから
家族は、転職に対して理解を示してくれ、特に反対はされませんでした。
「自分の知識がほかの職場で通用するのか」という不安について、実際に在宅で働いてみて「これができれば通用する」と感じたスキルを、こちらにまとめています。
病院を辞めるときに大変だったこと
転職活動の中でのいちばんの山は、上司に退職の意向を伝えることでした。病院は常に人手不足だったのと、臨床経験がゼロの自分を拾ってくれたという恩義を感じていたのもあり退職の意向を伝えるのが一番しんどかったです。意を決して退職の意向を伝えたところ、話をする時間を取ってもらい自分の今考えていることを正直に話し納得して退職を承認してもらえました。
また、当時から心不全療養指導士の認定を取ろうと思っていましたが、「いつでも取れるから、まだいいや」と楽観的に考えて後回しにしていました。いざ病院を辞めるとなったときに、病院を離れたら認定を取るのが難しくなるのでは?という不安もありました。
在宅特化型の薬局での1日
在宅特化型の薬局での1日は、だいたい次のような流れです。
- 午前:7件ほど訪問
- 午後:15件ほど訪問
- 薬局に戻ってから:報告書を書く。処方医、ケアマネージャーへ報告書送付。
訪問先は施設がほとんどなく、99%が個人のお宅でした。
病院との違い:患者さんに深く、長く関われる
病院と在宅の一番の違いは、患者さんに深く関われることです。
急性期病院は入院から退院までが早いです。状態が良くなれば退院、もしくはリハビリ転院をします。めずらしい症例に出会う機会も多く、専門病院でしかできない経験が積めましたが、一方で一人の患者さんに深く関わることは難しいと感じていました。
在宅では、同じ患者さんに継続して関わることができます。病院にいた頃は、患者さんはもちろん、病棟の看護師さんや医師から自分の名前を認識してもらうことはほとんどありませんでした。病棟で声をかけられるときは「薬剤師さん」と呼ばれていましたが、在宅では患者さんとの関わりの中で、薬剤師としてよりも個人として認識してもらえ、名前で呼んでもらえることがうれしかったです。
「治す」から「生活を支える」へ。介護の視点を持つようになった
関わり方だけでなく、患者さんを見る視点も変わりました。
病院にいたころは、「病気を治す」という医療の視点で患者さんに介入することがほとんどでした。
在宅特化型の薬局に移って、介護の領域の方々と関わるうちに、「治す」ではなく「病気と付き合っていく」「生活を支える」という介護の視点を持つようになりました。この視点は、それまで自分の中にまったくなかったもので、転職してから得た一番大きな学びだと考えています。
患者さんのお宅を訪問したときも、薬をどれだけ飲めているかはもちろん、食事や睡眠、困っていることなど、患者さんの生活に目を向けて関わるようになりました。
病院の経験が活きた場面
無菌調製ができる薬剤師は少なかった
一番活きたのは、病院で身につけた無菌調製の手技です。転職先には病院で働いた経験のある薬剤師がおらず、無菌調製ができる薬剤師は多くありませんでした。
輸液の配合変化
在宅では輸液を扱うことが多くあり、中には配合変化に注意が必要な薬もあります。処方箋を見るだけでは点滴のルートがどうなっているかわからないので、訪問看護師さんに確認し、必要であれば、投与前後のルートフラッシュ用の生理食塩液をクリニックに処方提案することもありました。
MR時代の経験が活きた「営業」
転職先は立ち上げから間もない店舗だったので、患者さんを増やすための営業も自分で行いました。
- クリニックへの飛び込み営業。MR時代も飛び込み営業が多かったので、その経験が活きた
- 配薬の途中でクリニックの訪問診療の車を見かけたら、出てくるのを待って声をかけることも
- ケアマネージャーのいる居宅介護支援事業所に営業し、患者さんの多いクリニックや、ケアマネさんの間で評判のいいクリニックを教えてもらう
営業は、患者さんへの配薬の合間という限られた時間の中で行っていたので、如何に効率よく営業をするかを考えていました。営業先の選定にあたり、ケアマネージャーさんや訪問看護ステーションへ、よく連携しているクリニックの聞き取りを行い、人気のクリニックを聞き出して営業に行くなど工夫をしていました。
在宅クリニックへの営業で実際にやっていたことは、こちらに詳しくまとめています。
印象に残っているオンコールの夜
在宅にはオンコール当番があります。中でも印象に残っているのは、がん末の患者さんに、麻薬が処方されたときです。
薬局ではポンプ(CADD-Legacy、CADD-Solis、クーデックエイミーPCAなど)の貸し出しもしていました。無菌調製後、夜中に患者さんのお宅へお届けして、クリニックの往診に同席して皮下への持続点滴を開始。
ご家族からは「遅い時間なのにありがとうございます」と声をかけていただきました。大変でしたが、対応してよかったと思えた出来事です。
大変だったこと:勤務時間は病院より長くなった
在宅はイレギュラーなことが多く、突発的な残業もよくありました。そのため、勤務時間は病院のころより長くなりました。
夜勤はなくなりましたが、楽になったことばかりではありません。
病院で夜勤をしていたころと今とで、家族との時間や働き方がどう変わったかは、こちらに書いています。
在宅特化型の薬局に向いている人・向いていない人
ここからは、実際に働いた私の考えです。
在宅は、働き方改革やワークライフバランスを重視といった今の時代の流れとは、真逆の働き方だと感じています。その分やりがいもありますが、熱意を持って取り組める人でないと続けられないと思います。
年収は高めですが、休みをしっかり取りたい人には、あまり向いていないかもしれません。
ただ、在宅医療は国が推し進めていて、これから需要はさらに高まります。薬剤師として働いていくには必須のスキルなので、一度は経験しておいた方がいいと考えています。
コスト意識が変わり、管理職の経験も積めた
転職先では管理職として採用されたので、経営者から店舗の利益を求められることが多くありました。
そのなかで、加算の取り漏れがないかの確認や在庫の管理など、病院のころは意識していなかったことを意識するようになりました。
そして、病院にいたころに不安だった「管理職の経験」を、在宅で積むことができました。
やっておけばよかったこと
振り返って思うのは、もっと勉強しておけばよかったということです。
緩和ケアの領域の勉強
在宅領域ではがんの末期の患者さんに介入することも多いです。オピオイドの処方自体は病院でも多く経験していたのですが、どうしても疼痛コントロールがつかない場合、夜間不穏になってしまう場合など、抗精神病薬などオピオイド以外の選択肢や患者さんの状態を考慮した剤型選択を検討する機会も多くありました。
実際のところ、そういった症例に出会わなければ勉強をすることはなかったのかもしれませんが、病院時代にもう少し緩和領域の知識をつけておいてもよかったと後悔することはありました。
心不全療養指導士の認定の取得
私は循環器疾患が得意分野で、勤務していた病院がECMOやimpellaといった補助循環装置も扱っていたため、超重症心不全の患者さんも頻繁に運ばれてきていました。心不全療養指導士の認定を取得するにはかなり恵まれた環境だったのですが、病院にいたころは「いつでも取れる」と思って認定を取るのを後回しにしていました。
転職すると決めたときは、病院にいるうちに認定を取得するべきだった…とかなり後悔しましたが、実際に在宅薬局へ転職してみると、心不全患者さんはかなり多く、しかも病院よりも深く介入することができたので、認定に必要な症例報告はまったく苦にならないほど書けました。ただ、残業時間も増えたため、取れる時に取っておくべきだったとは今でも思っています。
また、在宅で営業を経験する中で、資格や認定といった強みを持っている方が有利だと感じました。
まとめ
- 病院から在宅特化型の薬局への転職は、友人に相談して紹介してもらい、相談してから約2か月半で内定
- 不安だったのは、自分の知識が通用するか、保険薬剤師として未経験でやっていけるか
- 在宅は患者さんに深く、長く関われる。病院で身につけた無菌調製や点滴の知識が活きた
- 「治す」だけでなく「生活を支える」介護の視点を持つようになった。これが転職して得た一番大きな学び
- 立ち上げ間もない店舗での営業には、MR時代の経験が役立った
- 勤務時間は病院より長くなった一方で、コスト意識が身につき、管理職の経験も積めた
- 在宅は熱意がないと続けにくく、休みをしっかり取りたい人には向かないかも。それでも薬剤師として一度は経験した方がいい
- もっと勉強しておけばよかった。特に緩和ケア領域の知識や心不全療養指導士の認定の取得。
病院で学んだことは、在宅でも十分に活かせました。病院から在宅への転職を考えている方の参考になればうれしいです。






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